【小説】宿命

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

「BOOK」データベースより


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以下、重大なネタバレを含みますのでご注意ください。







少年時代に突如現れたライバル。

言葉を交わさずとも、一目合わせただけで宿敵と直感できる存在。

がむしゃらに走れど走れど追いつけず、宿敵は息をするも同然、事も無げに差を拡げその先へ…

しかもそれが自分には縁遠く、異なる世界の存在となるなら諦めもつくってもんでしょう。

しかしそうはさせないのが初期の東野作品!

やり場の無い嫉妬、誰にも相談できないジレンマ、現実を直視しなければならない苦悩。

この辺りの…何て言うの?

大人になっても洗い落とせない、ドロドロした青春の煮凝り?





Rockyなら逃げ出すね、遠くに。

そんな絶対に勝てない宿敵と対峙した時のことを考えて

「居心地が悪いってことは…
あ、自分の居場所じゃないんだ、ココ!」


と素直に安住の地へと旅立つ覚悟がいつでも用意されてます。








元オリンピック金メダリストのカート・アングルってプロレスラーがWWEにいるんだけど、彼がWWF時代に披露した連続ジャーマンスープレックスは、相手の腰に廻した腕を離さずに3、4回ぐらいマットに叩きつけ、さらに最後は投げっ放しジャーマンで後ろに放り捨てるパワフルかつダイナミックな投げ技。

この物語の終章はまさにそれ↑

東野作品にはすっかりお馴染みになったピース合わせとも言える伏線回収で隠されていた事実が次々に明らかになる度に読者はマットに叩きつけられるかの如し衝撃を受け、最後に待ち受けていた勇作と晃彦が双子という結末は「これでもか!」とばかりに投げ捨てられる感覚を見舞われました。

全ては終章の為。

それ以前の殺人事件や時差アリバイや真犯人、昼ドラじみた恋愛図や勇作と晃彦の生い立ちなんかも、物語唯一のキモであり最大のギミック「宿敵は双子」に向かわせるレールに過ぎなく思わせるほどの読了感でした。

読み終えた者の心に深く何かを刻む物語とはこんな本の事を言うのでしょうね。







著者曰く「一番気に入っている意外性であるラストの一行」が良く分からなかったのが勿体無かった…

この著者の言葉をまともに受け取る限りでは、実は弟に追い付けなかった愚兄だったと解釈すればいいのか、それとも弟相手にムキになっていた愚兄と解釈すればいいのか、はたまたおどけた声で最後の一言を言い放った晃彦から察するに、彼は勇作が兄だという事実を知りながら、腹の中では「ふふん…この愚兄が!」と見下していたと解釈もできなくもないです。

愚兄、愚兄って…




















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